大阪地方裁判所 平成2年(行ウ)11号 判決 1990年6月05日
東京都国立市富士見台二-一九-三
土屋方
原告
大江一男こと
王栄華
大阪府茨木市上中条一-九-二一
被告
茨木税務署長
右指定代理人
白石研二
同
堀秀行
同
中田孝幸
同
濱田猛司
主文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、原告が昭和五九年三月三一日に昭和五八年分所得税として納めた七九一万九八〇〇円から六坪分営業用針灸治療室に相当する金員を控除した残額及びこれに対する昭和五九年三月三一日から支払ずみまで年一割の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、既に納めた所得税につき、茨木税務署長を被告として、被告に対しその過納金の還付を求める事件である。
一 争いのない事実
原告は、阿倍野税務署長に対し、昭和五八年分所得税の確定申告書を提出し、昭和五九年三月三一日に、右所得税額七九一万九八〇〇円を納付した。
二 争点
被告適格及び過納付金の存否が争点である。
第三争点に対する判断
所得税は国税であり、かかる国税として納付された金員について、それに対応する確定した租税債務が存在しない場合は、国は、右金員を収納すべき法律上の原因を欠くことになる。国税通則法五六条は、右のような公法上の不当利得の性質を有する金員について納税者への返還を規定したものであり、同条で規定する過納金は、あくまで国の返還金であつて、国の行政機関である税務署長がその返還の実体法上の義務を負うものではない。
これを本件についてみるに、被告茨木税務署長は、国の行政機関にすぎないから、国税たる所得税の過納金のような国の返還金について権利義務の帰属主体にはなりえない。
よつて、被告には、過納金の還付を求める本件訴えについての被告適格はないものと解すべきである。
したがつて、本件訴えは、被告適格を欠く不適法なものとして却下すべきである。
(裁判長裁判官 田畑豊 裁判官 小林元二 裁判官 田中健治)